2008年05月25日

【読書感想文】「海の都の物語」から知るわが国の未来との接し方


「ローマ人の物語」で有名な著者が描くベネツィア共和国の興亡史。
こういうと歴史オタクしか好きそうじゃない内容だが、今の日本に
非常に大きな学びを与える書だ。

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海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集) (単行本)塩野 七生 (著)


ゴンドラや運河で有名なベネツィアは8世紀から1000年の長きに渡って
海外とのビジネスで栄え、自由と独立を保ってきた稀有な国だ。
暗黒の中世時代にも狂信とは無縁の言論の自由を持ち、
ルネサンスを体現し数々の芸術作品を生み出した。

日本ではほとんど知られていないベネツィア共和国。その誕生から
死までを描ききった大作。
大作でありつつ警鐘の書でもあろう。ベネツィアと日本。奇妙にも
多くの点で似通っている。

一つは資源に恵まれず、領土も狭く、自給自足もかなわないハンディ
キャップを持って生まれたこと。
また、それゆえ商業・交易で生きざるをえず、それを強みに
生かして経済大国にのし上がったこと。
更には周囲に巨大な国を持ち、そこをサバイブしていかなければ
ならなかったこと。

日本とよく似たベネツィアは、しかし現在の日本が到底及ばない
強みを生み出す。

国家ぐるみの情報収集機関とそれに基づく外交技術。
ポピュリズムにも宗教にも君主にも偏らないためのユニークかつ
巧妙な政体。

これらの徹底的に頭を使った国家・外交運営によって、少ない資源と
人口のベネツィア共和国は1000年もの長きに渡って繁栄する。

今の日本を想う。近代日本が生まれてから140年。大戦での完膚なき
までの敗北から40年程度で世界に冠たる経済大国にのし上がり、
そして少子高齢化に伴う労働人口減少によって、今や緩慢なる衰退の
局面を静かに歩んでいる。

政府の委員会などに出る度に、徐々に死んでいく我が国のベッドの
隣に何もすることなく座っているようで憂鬱になり、しかし
「盛者必衰の理」ということで、これも致し方なし、と言い聞かせていた。

しかし、この本は、ベネツィアは私たちに大切なことを教えてくれる。
「盛者は必衰だ。しかし如何に衰えるかは、人間の努力の余地がある」と。

資源小国ベネツィアは様々な創意工夫と英知を結集した芸術的な
政治技術によって、1000年も衰退を引き伸ばしに引き伸ばしたのだった。
そして死してなおベネツィアの残した芸術や文化はイタリアに、全世界に
引き継がれている。(例えば今私たちが楽しんでいる文庫本は、彼らの
発明だ。)

そう、わが日本も緩慢なる衰退を従容と引き受けることなどないのだ。
最後の最後まで抵抗し、やれることをやり、何度も再生と脱皮を繰り返せる
はずなのだ。

維新から数えてたかが140年程度の歩みで諦めてしまうのは100年、いや
1000年早いとベネツィアは教えてくれるのだ。



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当記事は、NPO法人フローレンス 代表理事駒崎弘樹の個人的な著述です。

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posted by 駒崎弘樹 at 21:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めてコメントします!!

以前から、時々訪問させて頂いています。
(読み逃げでしたが・・・)
今日の更新を見てめちゃめちゃ応援したくなりました!!
がんばってください!!!!


Posted by ルカ at 2008年06月26日 16:26
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