また後輩からの相談に乗る機会があったので、備忘録的として。
NPOのスタートアップフェーズにおいて、経営者はプレイングマネージャにならざるを得ない。自ら電話を取り、営業し、オペレーションを組み立て、時にクライアントの前に立ち、経理と人事を兼ねる。それでも(助成金等ではなく)自分自身に事業収入で給料を払えるまでには、1年間以上かかっても不思議ではない。
その後、事業収入がある程度入ってきて、有給スタッフを複数人雇用するようになると、マネジメントの必要性が発生する。事務局だけで成り立つ業務と、事務局と現場がある場合は、現場がある方がマネジメントの必要性が顕在化するのは早い。
マネジメントの必要性は、通常「人の問題」として顕在化する。あるスタッフの能力が十分でない。ミスが起きる。意識がすれ違う、等など。しかしそれは厳密には「人の問題」
ではなく、「仕組みの不在」によってもたらされる。
何らかのミスやトラブルが発生した時には、鎮火後、再発のための仕組みづくりを怠ってはならない。具体的には、ルールや手順を記した書面を担当者と作成し、それを担当者が遂行しきるまでコミュニケーションを取ることだ。
このように、自らプレイヤーとして手を動かしながらも、仕組みをつくり、それを遂行できるようになるまでコミュニケーション(激励と指導、褒めと期待伝達)を繰り返し行いながら、徐々に自分のプレイヤー度を落としていく。最初は9割プレイヤーだったのを、半年で8割5分プレイヤー、1割5分マネジメントに、次の三ヶ月で8割プレイヤー、2割マネジメントに、というように。
この作業は、通常は行きつ戻りつつになる場合が多い。せっかく育てたスタッフが辞める、ある程度形になっていた営業体制に大幅な変更が必要になり、自分で手を動かして建てなおさなくてはならなくなる、等など。しかし、それは想定内のものとして、うまくいくやり方をつくり、それを書面化し、自分以外でもできるようにさせる、という無限の繰り返しを繰り返すことだ。
経営者がプレイヤー度合いを下げられることで、リソースを需要創出と供給ライン構築の最適化に避けるようになり、それが需要と供給のらせん型成長を支えることにつながっていく。
数人が雇えるようになった、というフェーズのNPOスタートアップ期においては、当初一人でやっていた時よりも色々なことが回り出すが、まだまだ組織キャパシティは小さい。ゆえに、勝ちパターンに集中し、組織キャパシティ以上のことを無闇にやりだすのは得策ではない。
例えばソーシャルベンチャーにおいては、社会性ゆえ多くのメディア露出(や講演機会)があるが、ステークホルダーを無闇に増加・多様化させるとステークホルダーマネジメントの労力が高くなる。必要なメディア露出とそうでないものをターゲットリーチと単価の軸によってシビアに峻別する。本業以外のサブプロジェクトを増やしすぎない。「できたらやった方が良いこと」ではなく「今やるべきこと」をとりあえず一定のところまでやりきる、等。
多くのことにNOという勇気と、地味なことをひたすら繰り返す忍耐が必要になるフェーズである。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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