2012年06月18日

【書評】出会い系のシングルマザーたち:今最も片山さつき議員に読んでもらいたい本


センセーショナルなタイトルだが、中身においては、著者は自ら痛みを感じながらこの国の貧困を描き出す。




はじめに言っておきたいが、僕はNPO経営者としてひとり親への安価な病児保育事業等を行なっているので、「全てのシングルマザーが貧乏だ」とか、「シングルマザーは出会い系をよく使っている」という極端なレッテル貼りの蔓延を恐れる立場である。(本書でも、本書に描かれている絶望的状況にいるシングルマザーは非常にマイノリティである、と断っている。)

しかし、本書は日本のセーフティネットが如何に脆弱かつ、我々国民自身が、如何に社会保障というものを理解していないか、を生々しく描き出す。

例えば「最後のセーフティーネット」と言われる生活保護。不正受給ばかりをメディアは取り上げるが、実際の不正受給率は0.4%。一方で、生活保護は必要な人の3割にしか出されていない。
本書に登場する社会的底辺でもがくシングルマザー(その多くはメンタルヘルスに課題を抱えている)にこそ、この生活保護は必要だ。しかし彼女たちは自らそれを拒む。なぜか。
引用しよう。

(うつのシングルマザー)「離婚して1年、いよいよ貯金が尽きた頃に、生活保護の申請に何度も社会福祉事務所に行ったんですけど、そのつど『なぜ働けないのか?』『元夫との養育費の話をやり直せないのか』って言われて、あれはほとんどイジメです。ただでさえ生活保護受けるのも、周囲の目が怖いのに」
「東京じゃ信じられないことだろうけど、ここらで生活保護を受けているというのは『泥棒扱い』なんです。このあたりも母子家庭そのものは少なくないけど、生活保護を受けると扱いが別物になる。『生活保護を受けている家庭の子が万引きをする』という根も葉もない噂をするお母さんがいた。その後、うちの子が不登校になりかけ、理由を聞いたらイジメ」
「バレないで売春で稼ぐほうが、生活保護の差別よりマシ」


自治体の「水際作戦」に加え、地域の差別感情、それに伴うイジメや嫌がらせ。社会学で言う「スティグマ(烙印)」を徹底的に押されることで、福祉からこぼれ落ちざるを得ない現状。

さて、こうした状況がある中で、「生活保護たたき」は社会的に有用か。
「本当に生活保護を必要としている人達」を救うことに繋がるか。

僕は「財政的制約の中、最大限スティグマを排した良い制度にしよう」という議論をこそ望む。安易な生活保護たたきに奔走する政治家と(マス、ネット問わず)メディアを、心の底から軽蔑する。

「自己責任だ!」と人差し指を突きつけ糾弾を行う前に、ぜひ本書を読んでもらえたら、と思う。
今必要なのは魔女裁判ではなく、より良き制度の具体的設計に関する議論なのだから。



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posted by 駒崎弘樹 at 08:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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