2011年09月25日

物語のみが我々をそこに立たせる/書評:『いつか、菜の花畑で』


母校の後輩が漫画で描いた東日本大震災。




被災地支援事業をしている私達が最も恐れることは、人々の忘却です。
有事モードから平時モードへと移行していくにつれ、人々の関心と協力、そして寄付は右肩下がりになります。

ゆえに災害支援をするものにとって「扉が開いているうちに」事業を開始し、関心が無くなることを織り込みながら、被災地において持続可能な支援事業を成立させていくことが、大きなテーマになります。そして支援事業自体も、地元の人々が活動の中心となり、彼らに事業そのものを譲渡し、やがては支援事業自体が発展的解散をし、地元主体の新規事業の苗床になっていき、支援事業の生涯の最後を飾ります。

だから、忘れられること自体は半ばあたり前のことであり、そこにおいて忘却を嘆くのは、厳しい社会事業を行うものとしては、ナイーブに過ぎるということも分かってはいます。

しかし、それでもなお忘れてはならないことがある、と僕は考えます。

それは「そこに確かに存在した一人一人の人生」です。

東日本大震災の死者数は15,782人、行方不明者は4,086人。(11年9月11日時点)
この惨事は、おびただしい数の数字として「記録」されます。
しかし私達が「記憶」するのは、いやすべきなのは、数でありません。「一人ひとりの人生が、確かにそこにあった」ということではないでしょうか。この私の人生がここにあるように。

数字は私達を理解はさせても、共感はさせません。私たちを共感させ、記憶として私たちの心に根を下ろすのは、「物語」です。一人ひとりが、確かにそこにいた、という音や匂いや肌触りの感じる、物語。

本書「いつか、菜の花畑で」は、私達にその大事な物語を共有してくれます。
漫画であるということが、より一層私達に物語を受け入れ易くさせてくれるでしょう。

私たちは本書を読み進めていくうちに、自らが母に感謝を伝えられなかった母子家庭の娘になり、患者を守れなかった看護師になり、飼い主をなくした犬になり、命を賭けて住民を守った新米警官の人生を生きるでしょう。

私は胸を掴まれ、揺さぶられ、しばし涙を止められず、嗚咽しました。
私自身が生きていたように、彼らもまた懸命に生き、最後の瞬間まで生きたのだ、という当たり前の現実。その現実にただ涙せざるを得なかったのです。
そして、本当は2万もの物語があって、その一つ一つが全て本書の登場人物と同様に、そして自分とも全く同じように、生き、生きて、生きていたのだ、という圧倒的な事実の前に、何らの言葉を見つけることもできません。

言葉を見つけられずに立ちすくむ代わりに、僕は記憶したいと思います。一度も出会わなかった無数の「あなた」の人生の存在を、物語を通じて。

311後を生きる全ての日本人に、この本を捧げたいです。






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posted by 駒崎弘樹 at 10:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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