政府が新しい公共円卓会議懇談会において、各省庁の概算要求内容を公表しました。http://ow.ly/2ApqP
概算要求とは何か。
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概算要求
概算要求とは、政府各省庁が8月末までに財務省に提出する次年度の予算要求のこと。歳入歳出、継続費、繰越明許費、国庫債務負担行為の見積書で構成される。
予算が大きくなりすぎないように、要求額には7月末ごろにあらかじめ予算要求の上限額が決められている。これを概算要求基準(シーリング)といい、各省庁が要求する予算の目安となる。財務省は、9月から各省庁から出された概算要求に基づいて査定をし、通常は12月に財務原案を各省庁に内示する。その後財務省が削減した部分について各省庁は予算復活を折衝し、政府案として閣議に提出するというスケジュールになる。
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つまり、各省庁が「ねえ、来年度これやらせてよ」と財務省に言うことです。財務省は「えー、これ意味ないっしょ、切りますね。これも切りますね。この件は縮小して通しましょう。」とかって正式な予算を作るわけです。
ということで、これを見ると、「新しい公共」を推し進めるために各省庁が何をやりたがっているか、が分かります。
私はこの未曽有の財政危機を迎える日本にとって「新しい公共」は必要不可欠だと思っています。これまで政府(官)が独占してきた「公共」を民間に開き、企業・NPO・国民一人一人が公を担っていく、新しい公共。それはすなわち「小さな政府・大きな社会」を実現することに繋がります。
何かあったらすぐ行政に文句を言って役所の人達を呼びだすのではなく、ひとまず俺達で考えて解決してみようよ、という姿勢。それは地域社会や職域、学区域等において人々が繋がりあい、助け合い、包摂し合う社会を実現していくことと同義です。
その意味で「新しい公共」推進派の私ですが、この概算要求には黙っちゃいられないので、この記事を書きます。宛先は財務省主計官です。
まず、「新しい公共」の名のもとに、どうでも良い事業の予算付けを各省庁が要求していることです。
「新しい公共」は「民間でやれることは民間で助け合うから、役所は出て来ないで良いですよ。どうしてもって時は、力貸して下さい」というのが基本スタンスです。
それなのに、役所が率先してやらんで良い事まで、ありがた迷惑にもたくさん列挙されているのです。
例えば列挙致しましょう。各省庁取り組み案 http://ow.ly/2ApqP の13ページ。下から2番目。
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【地域新産業創出促進事業】
地域の商工団体等と連携し、ソーシャルビジネス事業者に対して活用可能な中小企業支援策等を普及・啓発する取り組みに対して補助
1,300百万円(駒崎注:13億円)の内数(注:13億の中のうち、いくらか、という意味)
経済産業省地域経済産業グループ立地環境整備課からの要求
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これなんか、例えばソーシャルビジネス事業者が使える補助金とか融資に関するパンフレットとか作って、日本商工会議所なんかに頼んで、全国の商工会議所の支部に置いてもらおうとしていることが目に浮かびます。
いちソーシャルビジネス事業者として言わせてもらうと、意味ないです。もし金借りたかったら自分でネットで調べるし、立ち上げ補助金等欲しかったら、ググります。
経産省さんは、自分達がやっている融資やら補助金を分かりやすくWEBに載せておく、ただそれだけで良いんです。別にパンフレットをシンクタンクに作らせて商工会議所に金払って撒く必要全くないですから。
ちなみにこういう事業って、商店街なりNPO支援なり、同類のものが腐るほどあって、ほとんど意味をなしてこなかった、と個人的には断言したいです。もっと使い道あるよね、と。
また、12ページ
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【地域ICT利活用広域連携事業】
課題を抽出した上で標準仕様を策定し、得られた成果を全国に普及
4,724百万円(47億円)
総務省情報流通行政局地域通信振興課からの要求
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ちなみにICT絡みだと、補助金をばらまいて、全国で「補助金もらった時だけ使うシステム」が生まれ続けていることを、僕ら関係者は見てきています。もはやITゼネコン向けの公共事業の様相を呈していると言えます。今回は標準仕様の策定、となっていますが、税金で標準仕様を作ってもらわなくても、それが必要であれば業界が勝手に横で話し合って、仕様なんぞ策定していくわけです。
更に11ページ
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【地域新成長産業創出促進事業】
地域に置いて、地域SB(ソーシャルビジネス)/CB(コミュニティビジネス)推進協議会と協働で取り組むソーシャルビジネスの普及・啓発に対して補助
1,300百万円(駒崎注:13億円)の内数(注:13億の中のうち、いくらか、という意味)
経済産業省地域経済産業グループ立地環境整備課からの要求
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でた、「普及・啓発」。パンフレットとポスターが全国に撒かれるのが目に浮かびます。
別に役所に普及してもらわんでも、各ソーシャルビジネスの主体が企業努力して活躍していけば、自ずとソーシャルビジネスへの興味・関心は湧いてきます。
役所はソーシャルビジネスが活躍しやすい土台(プラットフォーム)を整えるだけで良いのです。
というように、突っ込んだらいつまでも突っ込める事業がてんこ盛りな概算要求。できれば財務省主計局に1ヶ月でも良いのでボランティアで参加し、切って切って切りまくりたい衝動に駆られます。
では、「新しい公共」を推進するために、国は全く何もやらないで良いか、というと、後押しくらいはできるのかな、と思っています。
この概算要求の中でも「筋が良い」政策は散見されます。
例えば12ページ
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「国際戦略総合特区」(仮称):地域戦略推進を担う事業者に対する出資についての所得控除制度の創設、「地域活性化総合特区」(仮称):公益的な事業のように供する不動産登記に関わる登録免許税の減免。
予算要求なし
内閣官房地域活性化統合事務局からの要求
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社会事業に対する出資の所得控除、というのは私が常々訴えている「社会事業法人」の中核となる思想です。自らの地域を良くする金を、地域の住民たちで出資する。そのインセンティブを与える、という制度は非常に重要です。
これが実現すれば、補助金(税金)に頼らずとも、地域で社会事業が立ち上げやすくなっていくわけです。
10ページ
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事業仕分け第二弾を踏まえ、行政刷新会議において、全ての独立行政法人や政府系の公益法人等が行う事業について横断的な見直し等に取り組むことを決定
予算要求なし
内閣府行政刷新会議事務局
内閣官房行政改革推進室
内閣府大臣官房公益法人行政担当室 からの要求
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どんどん仕分けて下さい。
11ページ
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【新しい公共支援事業】
NPO等が公益性の高い事業を実施するための寄付募集への支援やつなぎ融資、債務保証の円滑化、活動基盤整備支援等を通じてNPO等の自律的活動を側面支援
9,831百万円(98億)
内閣府政策統括官付(経済社会システム担当)付参事官(社会基盤担当)付 からの要求
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ここで出た「つなぎ融資」というのは重要です。
例えば政府事業をNPO/ソーシャルビジネスにアウトソーシングする場合、おうおうにして支払いが年度末に一括支払いです。年度末支払いで何が困るかというと、中小NPOですと、年度末まで引っ張られるわけですから、キャッシュが底を尽きちゃうわけです。職員の人件費は年度末一括払いとはいきません。
そうすると、独法とか特殊法人とか手元資金に余裕のあるところが元請けになって、NPOが孫請け化していって、という構造になってしまう。結果として一社でやればより少ない税金で社会事業ができるところを、子請け、孫請け体制にすることで、費用(税金)が嵩んでいってしまうわけです。
こうしたことは委託と「つなぎ融資」を一体化させれば解決できます。「支払は予算の関係で一括払いです。でもその間の資金はこちらでつなぎ融資を借りて下さいな。」ということであれば、中小でも資金は無いけど実力のあるところがどんどん参入して来れるわけですね。
このように、少し頭を使えば、有用な政策というのは生み出せるものです。いや、頭さえ使わなくて良い。現場に行って、現場の事業者の声を聞けば、耳さえ使えば「本当に必要で意味のあるもの」と「そうじゃないもの」の違いなぞ、すぐ分かるわけです。
各省庁にお勤めの方々は大変優秀な方々かと思うので、霞ヶ関の会議室の中で政策立案するだけでなく、是非現場の声を聞いて頂き、本当に必要な政策「のみ」を概算要求して頂きたいと思います。
また財務省主計局の皆さんは、上記の「とりあえず予算下さい」的な新しい公共関連事業を是非とも切りまくって頂けると幸いです。
国を助けて、国を頼らず。
新しい公共の夜明けを、官民一体となって推し進めていこうじゃないですか。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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