2010年02月01日

【韓国視察報告】社会的企業法人及び社会的企業育成法に関して

国際交流基金が主催する日韓社会的企業国際会議(専門家会議部門)に出席してきました。

韓国では2006年末に社会的企業育成法が成立し、社会的企業認証がスタートしました。社会的企業に認証されたNPOや株式会社は大幅な優遇措置があります。例えば寄付控除、低利子貸付などに加え、驚くべきことに人件費の3年間補助まであるのです。

韓国政府(書簡は日本の厚生労働省にあたる労働部)の積極的な社会的企業支援策には目を見張るものがあります。

一方世界屈指の借金を抱える日本国政府においては、特殊/公益法人に無駄に出している補助金をカットし、政府そのものの支出も大胆に見直さなくてはなりません。社会的企業を支援するとしても人件費補助等の新たな補助を行っては、改革と逆行してしまいます。また、社会的企業自身にとっても、3年間とはいえ政府の補助金が入ることで自立が阻害されてしまうのではないか、と危惧したのです。

その疑問を率直に韓国サイドにぶつけてみたところ、韓国側でも自国の手厚すぎる制度に関しては反対意見を述べる専門家が多く、まさに今国際会議のテーマが「自立」であったことからも分かるように、問題意識の中心を占めるものでした。

一方実務家達にとっては「そもそも社会的弱者を50%以上雇用したりしているということは、普通の企業よりも重い荷物を背負っているということだ。飛び立てるまでには時間がかかるので、その資本金的な意味合いとして十分機能している。」という現実的な意見も出ました。

確かに韓国の社会的企業に認定されるためには厳しい審査をクリアしなくてはならず、それは例えば全従業員のうち半数が社会的弱者(彼らは「脆弱者層」という言葉を使っていましたが、意訳。障がい者や移民、一人親等)でなくてはならなかったり、サービスの顧客が社会的弱者でならなくてはいけなかったりと、経営的にはかなり厳しい足枷がつくのです。

狭き門にする代わりに手厚い優遇策を設ける韓国の戦略は、日本における社会福祉法人を彷彿とさせます。社会福祉法人は税制優遇、寄付控除の他、厚生労働省の委託事業の申請を「社会福祉法人のみ」とすることによる、競争回避の優遇を得てきました。(足りなくて困っているという認可保育園に関しても、多くの自治体ではいまだに「社会福祉法人に限る」という制約をつけています。)

これは韓国労働部が雇用者数を政策目的数値にあげている、というのが決定的な理由です。日本でも同様ですが、長引く不況による失業者数に苦しめられる韓国にとって、失業者数を減らすために社会的企業に雇用の、特に社会的弱者の雇用の受け皿になってくれることを期待したのです。

日本人からはやりすぎに見える人件費補助も実は文脈がありました。『公共労働』といって政府が掃除や壁修理などを失業者に発注する代わりに人件費を払っていた政策が源流にあったのです。当初は自治体が雇用して公共労働を行っていましたが、NPOに委託を行うようになりました。自治体が掃除や壁の修理等、場当たり的な労働を失業者に提供したのに対して、NPOは介護等の技術習得を伴った公共労働を行い、成果をあげました。そこから公共労働の委託はNPOがもっぱら受けるようになり、失業者の人件費は政府→NPO→失業者という形で流れていきました。この流れから、社会的企業に勤める社会的弱者(多くは失業者)の人件費を政府が面倒をみることはさほど違和感を持たれず、実現されていったのです。

さて結論として、日本では韓国のような手厚い保護を受ける社会的企業法人格を作るのは適切ではありません。優遇策は少なくても、動きやすいCICに近い形態を取るのが国のためでも、また事業者自身のためでもあろうと思います。

では韓国の政策に見るべきものはないのかというと、そうではありません。社会的企業への金融環境づくりなどは、特筆に値します。

例えば中間支援団体(「共に働く財団」等)が社会的企業への貸し付けを行っています。日本では銀行以外の団体がお金を貸すことに厳しい制約が設けられていますが、韓国では貸金業法を改正し、中間支援団体がNPOや社会的企業に貸し付けを行うことや、NPOが脆弱者層にマイクロクレジット(少額融資)を行うことを認めているのです。これはモハメド・ユヌス氏が韓国にて行った精力的な講演活動に政治家や市民団体が動いたことで実現したということです。

日本でも非正規雇用から失業しホームレス状態になってしまう方々が急増中ですが、現状では生活保護申請という選択肢しかありませんが、生活保護を受けられる人の割合は現状では約3割です。例えば生活保護が受けられるまで機動的に貸付けられるようなツールを貧困支援NPOが持っていたら、多くの人々の助けになるのではないでしょうか。

更にまた例えば日本の財団があげきりの助成金だけでなく、半分助成金+半分融資、というような新たなプログラムを開発し、NPOに事業性を高めるインセンティブを持たせることもできるようになります。カナダ等ではPatience Loanという長期の低利子貸し付けを行う機関が存在するそうです。これは5年〜10年タームでNPOに資金を貸し付けることで、擬似的な「出資」を実現できます。

このようにお金の仕組みを変えることで、事業者の取れる選択肢は多様化し、その分社会的問題解決の効果が高まっていくのです。


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posted by 駒崎弘樹 at 11:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 業務日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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