2009年12月27日

【書評】「湘南の風に吹かれて豚を売る」

はっきり言って、うまい文章じゃない。




構成も現在の意見と過去の描写が行きかう場面が散見し、読み手にとっては不親切。

しかし、なぜだろう。そうした不器用さが本一杯に散らばっていても、なお胸に残るこの温かみは。

著者宮治勇輔が僕の友人だからか。友達のひいき目でそれもあるだろう。しかし、おそらくその温かみは何よりも著者の「不器用さ」そのものから発せられるからではないだろうか。

彼は6K(きつい、汚い、かっこ悪い、臭い、稼げない、結婚できない)である農業を何とかしようと実家に帰って、実家の養豚業をビジネスにしようと奮闘する。

そこで彼が考えた戦略が「バーベキュー」。
ひたすら自分のところで作った豚肉でバーベーキューパーティーをやって人を呼び、食ってもらう。

いや、それ戦略じゃないから。
誰しもそう突っ込みたくなる。もっと精緻なビジネスモデル作らないと、、、とハラハラする。けれど彼はビジネスモデルを作って、走るのではなく、走りながら考えていく。とりあえず手を動かし、汗をかく。

かくしてバーベキューが繰り返されることで、来た人々は宮治豚がむちゃくちゃうまいことを知る。そして農協を通してではなく直接買ってもらえる販路が作られていく。

考えてから走るのではなく、走りながら考える。その姿勢によって、幾つもの機会が彼に降り注ぐ。

そういえば、僕が彼と初めて出会ったのも、彼が不器用に肉を焼いている時だった。その頃付き合っていた彼女に、渋谷のITベンチャーの屋上でバーベキューをやる人がいるから来なよ、と誘われた。私の先輩なんだよ、と。

ビルの合間に場違いに鉄板が並び、肉の焼ける良い匂いが空いっぱいに広がった。老若男女がビルの屋上にひしめき、僕も列に並んだ。肉を焼く人は汗だくだ。どこかの業者の人だろうか。特に関心もなく、目の前の焼かれたばかりの豚肉をつまんだ。うまい。うますぎる。こんな旨い豚、久しぶりに、いや初めて食べた。驚愕した。隣の知らない人から酒がなみなみとつがれる。カンパーイ!
楽しいな。肉はうまいし、酒はうまいし、周りは皆友達みたいだ。
バーベキューの時間はあっという間に過ぎて言った。

今から思うと、あれがこの本に書かれていたみやじ豚バーベキューで、汗だくで肉を焼いていた人が宮治くんだった。あれから何年も経って、バーベキューから始まった農業改革は、農家の後継ぎ達の全国的ネットワークに変わっていった。

不器用で、だけれどもひたむきな彼が、いや彼を象徴とする何千もの農家の後継者の若者たちが今立ち上がらなければ、日本の農業は近いうちに今よりももっと悲惨な状態になってしまうだろう。

なぜなら、
・2004年から2008年の4年間で農業人口が17%減り、
・東京都の総面積の1.8倍もの耕作地が放棄されていて
・農家で働く人の70%が60歳以上

これが日本の農業の紛れもない「今」だからだ。


不器用な若者に拍手を。
夢中で走りながら、汗をかきながら、仲間と出会い事業が生まれる。
そうして生まれた一つ一つの事業が明日の日本の食を、日本の未来そのものを生産するのだから。




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