2009年12月14日

総理アゲイン



ひょんなことから総理の視察先を推薦させて頂く機会がありました。新しい公共を担う素晴らしい団体は幾つもありますが、ぜひ見て頂きたかったのが、こちら。

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●アフラックペアレンツハウス
http://www.aflacparentshouse.jp/


小児がんの子どもたちは、長期入院します。そんな時、親御さん達は病気の子どもたちに寄り添ってあげたい。
けれども病院は宿泊することができません。ビジネスホテルだって一泊6000円くらいするので、一か月利用すると18万円かかります。これでは中々看病もおぼつきません。ですので、多くの親御さんは車の中で寝泊まりしているそうなのです。

車の中での宿泊は体に良くありません。親御さん達はこどもが小児がんということで心がさいなまれ、体は車中泊によりぼろぼろになります。

こうした事態を打開するため、看病する親御さんたちが安価に泊まれる宿泊施設を創ろう、とアフラックは立ち上がりました。

「財団法人がんの子供をまもる会」さんに運営を委託。建設費、運営費ともどもアフラックが出費し、全国に10万人近くいる小児がんや難病と闘う子どもたちの家族のための施設をオープンしたのでした。設立以来68000人を超える人々が利用しているといことです。

「財団法人がんの子供をまもる会」の理事長の方は、ご自身がお子様をがんで亡くされたお父さんが務めておられ、補助金ではなく民間寄付で成り立っている、ということを誇らしげにしきりと仰っていました。

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企業とNPO(財団)が手を取り合い、公共を担っている素晴らしい事例だと思います。

しかしこうした取り組みは営利企業であるアフラックに何か得があるのか?と思われる方もいるでしょう。僕も最初はそう思いました。
アフラック創業者であり、フローレンスアドバイザーでもある大竹美喜(よしき)最高顧問は僕の問いに答えて仰いました。

「私は今の言葉で言ったら、社会起業家になりたいと思っています。私は日本では存在しなかった、いや存在を許されなかった『がん保険』というものを、時の政府と闘って35年前に世の中に生み出しました。それはがんで苦しむ方々と、その家族を助けたかったからです。お陰さまで1300万人、日本の人口の10%もの方々が加入して下さいました。その使命からすると、こうした活動は当然事業の一部なのです。損や得ではないのです。」

その力強い発言に、僕は胸を貫かれるような思いを覚えました。

まさに、政府や行政等の官だけが公共を担う時代を終え、民間においても公共を担う時代は、既に訪れつつあるということが言えるのではないでしょうか。


視察を終え鳩山総理も、下記のようにご発言されました。

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asahi.comより
http://www.asahi.com/special/09006/TKY200912120282.html

 【視察の感想】

 ――総理が今日視察した4カ所の感想を。また、政府の税制調査会が中小企業への減税を見送る公算が高いが、この視察を中小企業や福祉施設など、政策にどう生かしていく考えか。

 「(前略)ある意味ではものすごくいい仕事をされているのにそういうところにうまく合うような支援策がないという思いを感じましたから、ここもしっかりとですね、私は手当をする必要があると思っております。ある意味で税制の問題で寄付税制を変えるということが大事かなと思いました。税金を国に納めるくらいならその一部をこういう暖かい施設のためにボランティアでがんばっている人たちのために支援しよう、そういうことをやってみたいと感じました。だから3番目のこれは大手の企業の方々の支援を受けてガンなど小児ガンやたいへん難しい難病などしかし、一生懸命がんばっている子供たちのためのあるいは、両親のための施設を拝見させていただき、ああそうかと、こういうところもあったなと。地方から東京に出てこられて、難病だからなかなか地方でできない、東京で手術されたりして、長い間かかる方もいると、そういう方々のためのお母さんやお父さんが出てきた時にそういう方々が泊まるホテルが高いと、そのための施設を整備している。これは我々なかなか民間でなさっていることに対して、国がどこまでお手伝いできるかっていう問題はあるけれども、こういう需要というものもあるということを感じてね、私、今日は3カ所いいところ拝見させていただいたと。・・・(後略)」

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こうした官では手が届きにくい領域に挑戦する事例がより多くできるよう、また企業がNPOと連携しやすいよう、寄付税制に言及して下さったのは、本当にありがたいことだと思います。

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欧米では当然のNPOの寄付税制も、日本では非常に不十分です。新しい公共を担うためのインフラを、今こそ形作るべきでしょう。政府に依存し、補助金をねだるのではなく、自ら稼ぎ、寄付を集め、企業と提携し、困っている人々の力になっていく。そうした国民のためのNPOが一つ、また一つと増えていく流れを、僕たちは創っていかなくてはならない、と強く感じたのでした。

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______________________

当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
PCサイト http://www.florence.or.jp/
携帯サイト http://www.florence.or.jp/m/index.htm

病児保育で困っている、サービスを希望するという方は、
こちらのフローレンス本体のページから、お申し込み下さい。http://www.florence.or.jp/

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いつもご支援頂き、誠にありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
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posted by 駒崎弘樹 at 22:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 業務日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ホスピタル・ホスピタリティ・ハウスとしては「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が有名ですが、アフラックさんも同様の社会貢献活動を行っているのですね。
私の妻がアフラック出身ということもあって、同社の活躍には勝手に親近感をもっているのですが、他の保険会社とは一線を画する取り組みに感銘を受けました。

アフラック創業者の大竹美喜さんがフローレンスのアドバイザーとはすごいことですが、今回のお話からすると、保育の闇といわれる病児保育問題に挑戦する駒崎さんの姿に、かつてのご自身の姿を見たのではないでしょうか(大竹さんは、32歳の時にアフラックの保険を日本で扱うようになり、周囲の反対に負けず2年半かけて認可を得たそうですね。その後も苦労が絶えなかったことと思いますが・・・。)

世の中、お金で解決できる問題ばかりではないですが、お金で解決できることはお金で即解決することが望ましいと思います。そのためには寄付税制の改革が重要な対策の一つになると思います。
これからもがんばってください。
Posted by ダイスケ at 2009年12月15日 23:06
>ダイスケさん

仰る通り、アフラック大竹さんは、僕が最も尊敬する起業家のお一人です。
本当に公益に殉じようという意識が体の内側からほとばしっている方です。
40近くも年下の僕に「駒崎様」と頭を下げる、なんていうか、本当に人間として磨き抜かれた方なんです。

僕もそうした大人になっていきたいと思っています。コメントありがとうございます。奥様にもよろしくお伝え下さいませ。
Posted by 駒崎弘樹 at 2009年12月16日 20:02
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