2009年11月07日

大学、中退率公表へ。大学の人材育成力の競争が始まる

カタリバ今村久美さんと、中退予防研究所山本繁くんの積年に渡るロビイングの努力によって、大学が中退率の公表に一歩動き出した。
http://bit.ly/3uqxhJ

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「中退率」「就職率」大学公表を
受験生の指標に 文部科学省、義務化狙う

 文部科学省は5日、国公私立大学に公表を義務づける教育情報の項目を盛り込んだリスト案を中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)大学分科会の部会に示した。5分野、計17項目からなり、大学側が積極公表してこなかった「中途退学(中退)率」や「在学者数」などが含まれた。受験生らの指標にしたい考えで、さらに項目を精査し、年度内の大学設置基準の改正を目指す。

 リストで示されたのは、教育の質を向上させるために大学が積極的に公表すべきと、文科省が判断した情報で、「教育」「学生」「組織」「経済的枠組み」「学習環境」の5分野。

 例えば、「学生」の分野では、「中退率」が盛り込まれた。中退率は、入学後の進級の厳しさを示す一方、不本意入学の多さなどにもつながるデータで、経営に直結するため大学が出したがらないのが実情だ。

 このほか、収容定員との差し引きで定員割れの実態が分かる「在学者数」、推薦入試やAO入試での入学者数が分かる「入試方法別の入学者数」など、リストには大学側が公表に消極的だった情報が含まれた。

 教育情報の公表は大学設置基準などで規定されているが、具体的な公表項目は各大学の判断に委ねられているのが実態。大学運営の基礎となる学則を公表している大学は41%(文科省調べ)に過ぎず、「説明責任を果たしていない」との批判もあった。
(2009年11月6日 読売新聞)
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ひきこもり・ニート支援をしているNPO関係者の間では既に明白らしいが、ひきこもりやニートを生みだす一つの契機が「大学中退」だ。

新卒一括採用が正規のルートで、そこから外れると非正規雇用→生活不安定→貧困化という固定ルートが形成されてしまった現代日本においては、「中退をさせない」ということが社会政策として必要になってきた、ということを、現場で汗をかいている人間はいち早く気づいていたのだった。

久美ちゃんに「何で中退するの?」と聞いたことがあったが、「まだ精緻な分析が必要だけど、学内で人間関係を作れない、っていうことが中退の主要因の一つだっていう仮説があるんだよね」とのこと。大学全入時代においては、大学そのものの機能自体を見直していかねばいけない、ということの象徴的なエピソードだ。

僕は専門家じゃないので、日本の高等教育自体をどのように再デザインしていくか、は彼らプロに任せるとして、とりあえず改革が遅れることによって生み出される社会課題に関して、いち早く政策的な手段を取るように動いた若きNPO経営者と政治家の方々には拍手を送りたい。

今後は「どこの会社に就社したか」という、今日では既に意味をなさない指標(なぜならどうせ3年で辞めるし、ブランド会社に入ってもその会社がいつまであるか分かんないから。)を誇るのではなく、どれだけ生徒に向き合ったか、ということを大学が競わねばならない時代になっていくのかもしれない。良いことか悪いことか、なのかはまだ分からないが。ただ、良い悪いなんて置いておいて、「変わった」ということに即座に対処しなければ、事態は悪化する、ということだけは確かだろう。

それにしても手元で事業を推進しながら、政策的な代替案を提案していく新しい社会事業家が増えて行ってくれるのは、頼もしい。

僕も拙著で示したが、社会問題には溺れる赤ん坊のメタファーが当てはまる。目の前で溺れている赤ん坊を助け出しつつも、遠い上流で赤ん坊を川に投げ入れる男を止めなくてはいけない。そのどちらをも行う、というのは非常に難しい作業だが、プロとしてはそれをやらなくてはならない。事業で汗をかきながら、寸暇を縫って、政治家や官僚にアプローチし、彼らが気づかぬ問題とそれへの処方箋を提起し、政策へと織り込んでいく。

ロビイング自体は金銭によって報われることはなく、彼らはアンサングヒーローであり続けるが、公益へと繋がる道は、しばしば天使たちの歌声ではなく、無関心と揶揄のひそめきによって成り立っている。しかし社会のための事業をする、というのはそういうことで、だからこそ僕は彼らに無限の同胞意識と愛情を感じるのだ。

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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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posted by 駒崎弘樹 at 20:23 | Comment(2) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 「赤ん坊のメタファー」のお話が心に重くのしかかりました。目の前に迫る問題を解決しなければならない。しかし同時に、その根源となる問題にも対処しなければならない。駒崎さんや、カタリバの今村さんなどの取り組みは、改めて言うまでもなく、不屈の闘志によって支えられるものなのでしょうね。
 私は、恥ずかしながら父親となって初めてこの国をより良いものにしたいと思うようになりました。駒崎さんや今村さんのようにはいきませんが、少しでも、みなさんの力になれればと思います。
 元気を頂き、ありがとうございました。これからもがんばってください。
Posted by ダイスケ at 2009年11月08日 23:27
>ダイスケ様

コメント誠にありがとうございます。ダイスケさんのように「こどもの世代により良い日本を残したいパパ」が100万人いれば、この日本は確実に変わると思います。

ぜひパパ業を皮切りに地域に踏み出して頂き、地域の課題解決を担って頂けたらと思います。

共に日本のために頑張っていきましょう!!
Posted by 駒崎弘樹 at 2009年11月09日 20:58
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