2009年07月27日

「坂の上の雲」に学ぶもの

NHK大河ドラマも予定されている「坂の上の雲」。



明治維新という革命を経て、若々しい近代国家を立ち上げたばかりの日本が、ロシアと戦うはめになってしまい、総力戦の結果、辛くも勝利を収める物語。

「竜馬がゆく」をはじめ司馬遼太郎小説ファンならずとも、涙なくしては読み切れないだろう。

そんな日露戦争物語である「坂の上の雲」を感動と共に読みつつ、一方で成功体験の恐ろしさと、リスクマネジメントとしての情報公開の大切さに戦慄した。

日露戦争は当時の最強の陸軍国に、二級国民であるアジアの極東国が勝利した奇跡的な出来事であった。
だが当時の日本は伊藤博文を始め「ロシアとは戦ってはいけない」と最後まで戦争回避に動く慎重さであった。一方で国力の限界まで、いや限界を超えて軍事力を建設し、帝国主義のサバイバルゲームに順応しようとしていた。

日露戦争においては、帝政ロシアの国家マネジメントのずさんさ、現場軍人同士の権力争い等のお陰で、幸運が舞い込み勝利を得ることができた。武器弾薬も切れかけ、財政も破たん寸前での講和。参謀、秋山真之の言葉を借りれば「天佑」である。

けれど、この綱渡りの成功体験を得てしまったことによって、日本国民と統治者の間で「綱渡り成功」が成功パターンとしてメンタルモデル化してしまった。

「運が良くかつ入念な準備と一定の前提条件による勝利」が日本軍の強さとして、日本人の優秀さとして認識されてしまう皮肉。
日露戦争の成功と共に、第二次大戦の破滅へと歩みだす。

では人は、国家は「成功体験による失敗」から逃れられないのか?
その鍵は「情報公開」が握る。

日本人にチャンスはあった。日露戦争の勝因分析を、つまびらやかにし、自分たちにほほ笑んでくれた運と条件を白日の下に照らすことは、できたはずであった。

しかし彼らはそれをやらなかった。東郷平八郎は軍神化され、間違いを指摘することはタブーとなった。陸海軍から出された資料も正確性に欠け、論功行賞のための物語となった。
マスメディアも冷静な分析をすることなく、(今と変わらず)国民を煽るビジネスとして機能した。

歴史にifはないが、もしあそこで日本政府が数々の政府資料を公開し、専門家の分析の手にゆだね、遠慮のない議論が国民的に行われていたら。第二次大戦のような勝ち目のない戦いに、日露戦争大勝利の成功パターンに囚われずに、オルタナティブな道を歩めたのではあるまいか。

これは企業経営でも、個人でも適応可能な原理だ。企業も成功体験が凋落を生みだす。それを防げるのは、成功も失敗もタブーなく議論できる土壌と情報があるか、ということ。個人だって、いつまでも成長し続けるためには、まずいものはまずいと言ってくれるフィードバックの仕組みが、個人の周りにきちんとあるか、ということが鍵になろう。

国家の命運を握る「情報公開」。今の日本は父祖たちから学んでいるであろうか。残念ながらNOだ。

アメリカの情報公開で密約があったとされる沖縄密約事件を、日本政府は公式見解で「そんなものはない」と、どう考えても嘘だと分かることを平気で言っている。度し難いほど馬鹿げている。

アメリカは一定の期間を経た公式文書の多くは、公開される。日本では葬りさられる。

あれほど多くの同胞を失った戦争を経てもなお、情報公開の大切さを学ばない我々は、何なのだろう。

日露戦争終結後に、連合艦隊総司令官、東郷平八郎自らがこう言っているのに。

「神明はただ平素の鍛錬に力(つと)め戦わずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安んずる者よりただちにこれをうばふ。

古人曰く、勝って兜の緒を締めよ、と」

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posted by 駒崎弘樹 at 17:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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