キャンペーンは記憶に新しい。
従来これでもかという悲惨な映像を押し出され、
「こんなに可愛そうなんだから寄付して」型の
キャンペーンとは異なり、多くのセレブリティを集め
研ぎ澄まされた広告表現によって、若者層を
始めとして普段こういう固めの話には乗ってこなかった
層を動員し、一種ブームにまで仕立てあげたのが、
当キャンペーンだった。
このキャンペーンは、おそらく日本のNPO業界に
金字塔を立てたと言っても過言ではない。
これまでのある意味左翼的な運動スタイル(デモや
署名)から、マーケティング戦略を駆使した
イシュー(社会問題)の大々的な提起が、
日本でも可能なのだ、と証明してみせたのだ。
(アメリカではこの手のソーシャルプロモーション、
あるいは企業のメリットと連動させる、
コーズ・リレイティッド・マーケティング
<Cause Related Marketing =直訳すれば「大義名分に関係させたマーケティング>
の事例が豊富だ。)
そのわが国のソーシャルプロモーションの可能性を押し広げた
キャンペーンの特異性を支えたのは、電通の
CMプランナーであり、かつNPOの広報を支援する
NPO「サステナ」を立ち上げたマエキタミヤコさんと、
中田英寿や北島康介を擁するサニーサイドアップの
次原悦子さんの存在が大きい。
今日の日経広告研究所のNPOと企業の協働(共に相乗効果を
発揮しながら協力しあうこと)に関するシンポジウム
で、マエキタミヤコさんと同席させて頂いたのは、
大変に勉強になった。
正直僕たちパネラーの持ち時間自体は限られていたため
「ホワイトバンドの『創り方』」までは突っ込んで
知ることはできなかった。
だがしかし、僕が何より感心してしまったのは、
彼女の「雰囲気」だ。
広告代理店の方々の、一種独特の押しの強さというか、
そういったものが一切ない。むしろフンワリとした
雰囲気を自ら「創り出している」。
例えば他のパネラーが発言している時、自分を
含めてたいていの方は下を向いていたり、
観客の方をぼぉっとみたり、次自分が何を
話そうか、メモを取ったりする。
しかし、彼女は違う。他のパネラーの方を向き、
口元にわずかな微笑を称え、そして時に
「良いこと言うわねー」「なるほどー」と
援護射撃を打つ。
僕は今まで自分が話している時がプレゼンテーション
の時間だと考えていたが、どうやらそれは間違い
だったようだ。人の話を聴いている時間も、大いなる
自らのプレゼンの場なのだ。
その手の抜かなさ、というかブランドというのは
どのように形成されるのか、ということを知り尽した
姿勢に、プロの神髄をみる気がした。
僕は人々が「この人の話を聴きたい」と思うような
人になりたい。多くの人が耳を傾けてくれた時に、
僕は、僕たちはようやく「病児保育問題が象徴する
両立を阻むわが国の構造」や「社会問題を事業で
解決するソーシャルベンチャーの重要性」を語る
ことができる。
この人の話を聴きたい、と思える自分に少しでも
近づくために、マエキタさんの姿勢を盗み、
いやマエキタさんだけでなく、出会う人全ての
人々から盗めるものを盗み取り、日の当らない
社会問題を世の中に広める力を、どうにかして
勝ち取っていきたいと思う。
真ん中がマエキタミヤコさん。
左下の二人はフローレンスのソーシャルプロモーション
チームインターンの「いさみん」と「むー」。
超偶然ですが、真ん中のサステナのウェブデザイナ玉利さんは、
僕がITベンチャーを経営していたときに、一緒に仕事を
したことがある方です。
よろしくお願いします。