2009年05月15日

知名度よりも実体を積み上げる大切さ



一昨日投げた話題に数人の実務家の方、コンサルタントの方から反応を頂きました。また、下記のような反論を頂きました。


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 僕はまさに「社会起業家支援委員会」という任意団体(※事業型NPOへ準備中)に関わっていますが、この「支援」はまさに「協働」を準備するものです。

 そのためには、「社会起業家が流行っている」とか、「社会起業家を知っている人が多数派になった」という認識(フェーズ1)では、何よりも社会起業家自身が困るはずです。

 「ふつうの人」のほとんどは、社会起業家が何をしているか知らないです。

 今日でも、中学生がモンハンをするように、主婦が井戸端会議でヨン様を語るように、フローレンスやマザーハウスを話題にしたりはしていません。
(ちなみにYMOが流行った際は中高生から40代まで、みんなテクノポップを聞いてましたよ)

 社会起業を知らない人が、社会起業家と一緒に汗を流して協働できますか?
 できませんよね。

 そこまでの関心がまだ高まっていないことに、実は社会起業シーンにいる人は切実さを感じていないんですよ。

 なぜなら、当たり前のように社会起業をしている人は、当然、自分と同じような人たちと親しく付き合うことになる。
 そうすると、まわりがみんな社会起業を知っている人になってしまう。
 だから、「こんなに知っている人が増えたのに」と勘違いしてしまうんです。
 これは、ある意味で「東京病」です。

 メディアに社会起業が載る機会が増えたから、社会起業家に関心を持つ人が増えたと錯覚してしまいがちですが、田舎をもっと見てほしいのです。
 社会起業なんて、誰も知りません。
 知らないからこそ、経産省も税金を使って認知拡大をしようってわけでしょう。

 まずは、「知る」こと。
 つまり、広報を支援すること。

 そして、社会起業家の存在と社会的役割を知ったふつうの市民が、自分の出来ることで社会起業家との「協働」に参画すること。

 フェーズ1に達していない人を置き去りにしては、フェーズ2へはなかなか進めないってことを、社会起業家自身が肝に銘じておかないと、せっかくの人材も調達できないと思います。

 だから、社会起業支援サミット(リンク)が必要になるんですよ。

 そこでサミットの全国各地の開催運営組織がまずやることは、「社会起業って何?」という議論です。
 というか、そこからどうしても始まってしまうんです。
 全国レベルでは、その程度の認知度しかないんですよ、実際。

 つまり、「みんな知らない」という認識から始めないと、社会起業家はいつまで経っても同じイライラを抱えることになるんです。

 支援から協働への流れは、障害者や高齢者の介護の活動シーンを見ると、よくわかります。

 まずは、当事者の障害者を支援する。
 その中で、支援者と被支援者がお互いを知って行き、やがて「支援者と被支援者が対等なパートナーとして協働する」という地平に落ち着いてくるんです。

 フェーズ1が果たされなければ、協働もないわけですよ。
(だからといって、広報を社会起業家の本業にするわけにもいかないので、僕は市民からのボトムアップを仕掛けているのです)

 なので、いみじくも経産省が昨年春に「84%の日本人は社会起業を知らない」というデータを発表したように、まずはフェーズ1こそが社会的課題なんだという認識を持たないと、協働のパートナーを集めることは難しいままでしょう。

 企業を味方につければ、金は出るかもしれません。
 しかし、必要なのは協働できる人材です。

 だからこそ、「人」を見てほしい。
 全国の市民が社会起業家を認知し、支援に動き出したことの重みを知ってほしい。
 そう切実に思います。

今一生

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blogを通して非匿名の実りある議論ができるのは嬉しいですね。
(皆も意見言ってね。)
さて再反論しましょう。

まず今さんは
> 今日でも、中学生がモンハンをするように、主婦が井戸端会議でヨン様を語るよう
>に、フローレンスやマザーハウスを話題にしたりはしていません。
>(ちなみにYMOが流行った際は中高生から40代まで、みんなテクノポップを聞いてまし>たよ)

と仰っていますが、ここが僕と今さんの最大の違いでしょう。
僕は中学生がモンスターハンターをするように、主婦がヨン様を語るように、ソーシャルビジネスのことを語る必要性は全くないと思っているのです。
「NPO」という言葉でさえ、島根のおばあちゃんにとっては全く馴染みがないもので、いわんやソーシャルビジネス、社会起業家をや、です。

例えばフローレンスの利用会員さんはフローレンスがソーシャルベンチャーだから利用して下さるのではなく、質の高い病児保育を提供しているから利用希望の手続きをし、毎月安くないお金を払って下さっています。

「育て上げ」ネットに来る若者は彼らがソーシャルエンタープライズだから来るのではなく、彼らに必要な職業訓練をしてくれる人たちだから来るのです。

ソーシャルベンチャーや社会起業家というターム(語)を知ってもらうことも、重要でないとは言いませんが、実体のある事業がそれより先にきちんと回ってなければなりません。
実体とは、どれだけ多くの困っている人々を助けられたのか。
どれだけ多くの「ありがとう」をもらえたのか。
どれだけ多くの不条理を防ぐことができのたか。
そうした地味な成果の集積です。

知名度がむしろ実体よりも大きくなった時に、ブームとなります。
モンスターハンターが数年で中学生から飽きられるように、ヨン様が消えちゃったように、それらは次のブームに取って替わられ、消費されます。

ソーシャルビジネスは、いやソーシャルビジネスという言葉が使われなくなったとしても、事業によって社会問題を解決するという営みは、緩慢なる衰退の道をゆく日本にはなくてはならないものです。それを数年で止めてしまってはいけないのです。
そこに華々しい栄誉がなかったとしても、僕たちは愛する誰かや、誰かの向こうにある社会のために、地味に継続していかなければならないのです。

ゆえに、ブームをあおるのではなく、中身のあるムーブメントにしていかなくてはいけません。地下水脈のように、音も立てずに、しかし木々を繁らせ、井戸になって渇きを潤すような。

大学生たちのイベントを通じて、市民に知ってもらう。それは悪いことではありません。むしろそうやって認知が広がることで、「実体のある行動」に本当に結びつくとしたら、正しい方向性だと思います。

しかし、我々の実体、とは恐ろしく地味で、ルーチンワークの連なりで、気苦労も絶えないような作業の塊のようなもの。それを知らない学生たちが、本当の意味で市民に社会起業を伝えることが、できるでしょうか?

社会起業サミットが、あるいはこれから色々と出てくるであろう同種のイベントが、単に社会起業家やソーシャルビジネスがあるよ、ということを知ってもらうだけでなく、そこで集めたお金を寄付し、その金を使って実際に貧困に苦しむ人が助かるなど、「リアル」に繋がっていくことを願っています。

最後に、今後皆さんのようなやる気のある方々はどうやってソーシャルビジネスに
関わっていけば良いのか、僕なりの意見を言って出口にしたいと思います。

例えば何のスキルもない人がフローレンスに1日ボランティアをしたい、と言って
きても、おそらくフローレンスは「気持は嬉しいけど、、、」と言って
困ると思います。自分たちの業務に適したことを何も頼めないから、です。

でもお金は分かりやすく役に立ちます。月8400円あればシングルマザーに
病児保育を提供するためのコストをカバーできるからです。

また、団体によっては実践型インターン(6ヵ月間、週3以上でコミットする非お客さん型インターン)を求めるところはあるでしょう。スキルがなくても、労働力は貴重な資源だからです。

上記の2つを提供する、具体的にはファンドレイジングイベントや、インターン発掘イベントであるならば、是非とも応援させて頂きたいと思います。
(華々しくないし、苦労はするでしょうが、意義は大きいです)

では、御活躍を祈念しています。

______________________

当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
PCサイト http://www.florence.or.jp/
携帯サイト http://www.florence.or.jp/m/index.htm

病児保育で困っている、サービスを希望するという方は、
こちらのフローレンス本体のページから、お申し込み下さい。http://www.florence.or.jp/

フローレンスのサービスエリアは東京23区の足立区/板橋区/江戸川区/江東区/品川区/渋谷区/新宿区/杉並区/墨田区/台東区/中央区/千代田区/豊島区/中野区/文京区/港区/目黒区/荒川区/大田区/世田谷区/葛飾区/北区/練馬区 です。

ひとり親への超安価な病児保育サービス「ひとり親パック」に共鳴し、寄付を
して下さる!という方は、下記のフォームでお申し込みください。
http://www.florence.or.jp/corp/fr/fundraiser/

株主総会に託児をつけたい、説明会に託児をつけたいという
イベント託児・イベント保育をご希望の企業様は
↓からお申し込み下さい。担当者の方からお見積もりを送らせて頂きます。
http://www.florence.or.jp/inquiry/form1/ask_others.html

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講演を依頼されたい企業、自治体、メディアの方々は
↓からお申し込み下さい。
http://www.florence.or.jp/inquiry/form1/ask_kouen.htm


フローレンスへのインターンを希望される学生は、
NPO法人ETIC.の細田さん宛にご連絡頂ければと思います。
http://www.etic.or.jp/


いつもご支援頂き、誠にありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
_______________________

posted by 駒崎弘樹 at 23:17 | Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拍手!

私自身、今さんの書き込みを見て、駒崎さんととてもよく似た感想をもったのですが、そのこと自体よりも、駒崎さんが自分と異なる意見に対して真摯に応えたことに拍手を送りたいです。

もっと異なる意見がぶつかり、こうした建設的な対話が生まれないと、「なれあい」さもなくば「無視」しかない状況からは発展はありえないと危惧している者として。
Posted by cloudgrabber at 2009年05月16日 07:33
>cloudgrabber

異なる意見がぶつかり、対話が生まれるないと、というのは正にその通りだと思います。

民主主義を支えるのが、この対話だと思っています。官僚主導のお上民主主義から、市民主体の草の根民主主義へと変えていくべく、まずは小さなところでブログ等で対話していきましょう。

coudgrabberさんも、もし異論等があれば積極的に投げかけて下さいね。
どうぞ宜しくお願い致します!
Posted by 駒崎弘樹 at 2009年05月16日 20:46
 反論というよりは、説明不足による誤解を解く必要がありそうです。

 たぶん、現在は断片情報しか伝わっていないので「社会起業支援サミット」が誤解されてしまうのも仕方がない点はありますが、僕らは学生と専門知識を持つプロ社会人の混成チームであり、数カ月か前からみんな睡眠時間を削ってもこのイベントを成功させるつもりで動いています。

 僕らにお金はありませんが、労力と知恵とプロ経験を集積する形で、これまでにないイベントを生みだしているんですよ。

 実弾としてのお金を「寄付」という形で集める以外にも、お金以上の価値あるものを提供することはできます。

 また、昨年のイベントを通じて実際にインターンを増やしたり、事業型NPOを興し始める人がいたり、出演された社会起業家に対してはメディア取材を呼び込むなどの広報支援をするなど、おそらく駒崎さんの想像を超える「お金以上のメリット」を提供しているのですよ。

 箇条書きに並べれば、6つあります。

☆サミット本番前に、社会起業家向けに「マスコミに取材される技術」を無料レクチャー
(自分たちの活動に必要な人・モノ・ノウハウを集めるために取材を呼び込む実践)

☆サミットでは、市民300人に社会起業家10団体が自らの活動と「今欲しい支援」について各15分プレゼンテーション
(ここでどれだけ多くの困っている人々を助けられたのか。どれだけ多くの「ありがとう」をもらえたのか。どれだけ多くの不条理を防ぐことができのたかが伝えられます)

☆サミット終了後に志ある市民と社会起業家との少人数による「カフェ・ミーティング」をセッティング
(ここでインターンをブッキングしたり、プロ社会人からの具体的な協働が話し合えるチャンスを作れます)

☆参加した市民300人分の連絡先・人脈などのデータを社会起業家10団体に提供
(300人の各スキル、人脈とつながれると同時に、メールマガジンの読者にもできます)

☆新聞社、テレビ局など報道関係者の取材をブッキングし、社会起業家への関心と認知を拡大
(メディア側は予備取材として取材したい社会的価値を持つ社会起業家を発見することができ、社会起業家はプレスリリースを好意的に受け止めてもらえる人材を得ます)

☆サミット終了後も各団体の活動をブログでインタビュー記事を紹介したり、サミットで撮影したプレゼン映像をYoutubeなどの動画共有サイトにアップして広報を支援
(この作業を通じて、社会的弱者の市民はネット上から自分が必要なサービスを提供している社会起業家の存在を知ることができると同時に、社会起業家は広報の手間を軽減できます)

 他にも、社会起業家を長期取材して、地道な活動を正確に伝えるドキュメンタリー映像のクリエイターを育成するなど、お金が無くても社会起業家を支援し、協働へと導ける仕組みを作りだそうというのが「社会起業支援サミット」なんですよ。

 ちなみに、ブームはピークを迎えると消えるのではなく、本物だけが定着していくのです。ヨン様は消えていませんし、おかげで「韓流」という市場ができたではないですか。YMOのテクノポップもどんどん進化・多様化する形で今日までたとえばperfumeへと受け継がれていますよね。

 実体は残っていくわけですし、その点では僕らはブームを作るのではなく、(あえてこう書きますが)社会的弱者が既存の仕組みで救われない時に「社会起業」で検索してみれば、自分の求めているサービスに出会える状況を目指しているのです。

 僕は人を救うことが、いかに大変かを知っています。
 10年以上も自殺未遂者ばかりと付き合ってきましたから、個別支援の困難さにも直面していますし、支援する側の生活が窮地に追い込まれかねない恐怖も味わっています。

 だからこそ、事業化によって持続可能な活動の必要性や、ミッション達成の暁にはサービスが不要になることも理解できますし、低所得・低学歴・低スキルでも食っていける仕組みの開発にも参画しています。

 そういう現場では、「みんなが知っているレベル」の内容でないと、そこに到達できない社会的弱者の多さを痛感します。

 単一の団体の素晴らしい社会的成果も大事でしょうが、そういう団体に同じタグが付いていれば、リンク先を追うようにして社会的弱者は社会起業家と出会えるのです。
 だからこそ、「社会起業家」というタグを共有する必要を切実に感じます。

 僕の友人に、共働きで3人の子育てや家事まで背負わされている主婦がいました(つまり、夫は子育て参加もしなければ、家事も一切やらないのです)。

 彼女は夫婦で稼いでも生活費と育児費に消えてしまうほど低収入ですし、低学歴です。生活に疲れた彼女は、僕の本の愛読者だったので「はじめまして。ネット心中をします」と伝えてきました。

 彼女は「病児保育」という言葉も知りませんでしたが、フローレンスのサービスを伝えると「お金を出せば心おきなく頼めるけど…」と口ごもってしまいました。

 もしフローレンスのサービスをわかりやすく伝える10分の映像をYoutubeで見ていたら、きっと彼女はネットの文字だけではなく、安心できる人たちがいることに勇気づけられていたかもしれません。

 家を飛び出してしまった彼女を、僕は電話番号を聞き出して呼び止め、遠距離でしたが会いに行き、彼女の気が済むまで何時間も話を聞きました。
 そして、一定期間、保証人不要の物件で過ごしてもらうことで落ち着かせ、今でも元気で生きています。

 彼女のような社会的弱者がそこまで追い詰められる前に、僕は「どうやら世の中には社会起業というものがあって、君が『もうだめだ』と絶望する前に具体的な解決を与えてくれる新しいサービスを提供しているかもしれないよ」と伝えたいと思っています。

 ご理解いただけましたでしょうか?

Posted by 今一生 at 2009年05月17日 03:34
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