2006年01月19日

【日記】1月19日 猫のいた家

友人の飼い猫が死んだ。

ShowLetter.jpg

彼女のメールアドレスはその猫の名前だった。
そんな飼い猫がいなくなってしまうのは、
彼女にとってつらかろうと思い、励ましの
メールを書こうと思った。

そうしたら、ふとうちのトロのことを思い出した。
トロは、僕が小五の頃、姉が夢の島で拾ってきた
縞猫だ。

トロは、僕が修学旅行で家を空けて帰ってくると、
もう誰だか分からなくなっているような、どうしようも
ないやつで、お互いわざと無視しあったりするような、
なかなか人間臭い微妙なやつだった。

でも時々暇なときはかくれんぼとかをして、隠れると、
とことこ歩いて色んなところを探しまわり、僕を
見つけると、じっ・・・と凝視するのだ。

その瞳のガラス玉のような深さが、愛くるしいような、
厳かなような、不思議な気分に僕をさせた。

トロはそのうち、姉夫婦に引き取られ、僕が大学生の
頃、背中に瘤をつくって、よろよろになって、死んだ。

トロが死んで3日くらい経った日の夜、姉夫婦は
刺身を夕食に食べていたそうだ。そうしたら急に
姉の旦那が、
「あ、トロが通った」
と箸をおいた。

トロがテーブルの下を通り、彼の足にすっと
体をこすっていったのを感じたという。

トロはいつも刺身の時はさりげなく自分が
いることをアピールし、でもそこまで賢くないので
にゃあにゃあ訴えずに、何となく尻尾の先を
パタパタしたり、ほんの少しだけ脛をさわったり
するやつだった。

その話を聞いてトロらしいな、と思うと共に、
トロは、いや他の何もかも、本当はどこか
知らない場所に行ってしまうのではなくって、
すぐそこにいて、僕らが彼らに何かの拍子に
本の少し「開かれた」時に、ふっと姿を見せて
くれるのかも知れない、なんてわけもなく思ったのだ。

いつかトロともう一回かくれんぼすることが
できたら、今度は僕が鬼になってどこかに隠れた
トロを見つけ出して、じっと、じいっと、
見て、あげたいな。
posted by 駒崎弘樹 at 00:31 | Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
神戸のjasmine papaといいます。
とても興味のある分野で仕事されておられる姿に先を越されたかなという気持ちでイッパイです。(笑)
現在はpediatricianをしていますが自分の家族のこともあり人生計画を練り直し中です。
お忙しいとは思いますが一度メールでお話しできたらと思います。
宜しくお願いします。
Posted by jasmine papa at 2006年01月22日 00:00
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