最近ビジネス誌等で社会起業家が取り上げられることが多く、
その際「社会的にどんな支援が必要か」と尋ねられる。
基本的に僕は実務家なので「語る」より「語られる」方を
選びたいのだけども、誰もまともに議論していないので、
呼び水として語ります。
かの質問に対して、僕は「『やる人』を増やす社会的な制度です。」
と今は答える。
かつては社会起業家やソーシャルビジネスに対する認知がなかった
ので、本の出版等で認知を広げていく戦略を取っていったが、
最近だとメディア等で取り上げられることも多くなり、次の
フェーズに進まないといけないと思っている。
次のフェーズというのは、「『やる人』を増やす」ということ。
インターンする、NPO/ソーシャルビジネスに就職・転職する、
プロボラとして汗を流す、スポンサーとして金を払う、
業務提携する、実際に社会起業する、と手を動かして実際に
携わる人が増えないといけない。
このままだと期待値だけ上がって、「じゃあ実際の成果は?」
となると「大したことないじゃん」となっていってしまうだろう。
某NPO金融機関の人で自分のところから1000人の社会起業家が出たと
雑誌でのたまわっている人がいるけども、残念ながら話盛りすぎ。
このムーブメントのある程度真ん中にいる僕でも、
今まで会った社会起業家達は50人程度。
つまりまだまだ限られた人々の中の、限られた動きということだ。
とはいえ、5年前に比べて「社会起業したい」という若い人の増加率は非常に目覚ましいものがある。僕が社会起業した当時との差は歴然たるものだ。
だからこそ、実際に「やる人」を増やす良い機会の時なのだ。
300万〜500万円のシードマネー付きのビジネスプランコンペを
全国各ブロックごとにやっていき、前線で事業を立ち上げていく
人たちに弾丸と食料を届けていけば良いと思う。
ところで最近、大学生から「社会起業家支援がしたい」というメールが来て、頭を抱えた。
はっきり言って大学生は「支援する人」ではない。「やる人」もしくは「共に闘う人」になってほしい。
「卒論や修論のテーマで書きたい」という学生も来る。一切断っている。研究論文は僕らの経営の足しにはならない。
興味があるんだったら、手を汚してくれ。
例えば先日会った学生は、グラミン銀行と一緒にITのプロジェクトをしにバングラデシュまで行ったそうだ。
「駒崎さん、これ見て下さい」とバングラデシュの新聞に載ったことを教えてくれた。
フローレンスのインターンには愛媛の大学を1年休学してインターンしてシャカリキに手を動かしていたやつもいたし、長野から1年休学してインターンして汗をかいているやつもいる。
楽天を立ち上げた本城先輩は大学院生の頃から関わり、ヨセミテ副社長の塚ちゃんは、大学生の当時Mixiで死ぬほど働いていた。今村久美もカタリバやってたし、山本繁くんもボランティアでもがいていた。
大学生の頃に手を汚して汗をかいて何かを立ち上げたり関わったり
するのに、全くリスクなんてない。むしろその頃の全身を投げいれた経験が、後から暴風雨でも自らを繋ぎとめてくれる錨となってくれる。
リスクを取らないことがリスクなんだ。
若者よ、支援してないで現場で手を汚そうぜ。
日本にはまだまだ全然「やる人」が足らないんだ。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
PCサイト http://www.florence.or.jp/
携帯サイト http://www.florence.or.jp/m/index.htm
病児保育で困っている、サービスを希望するという方は、
こちらのフローレンス本体のページから、お申し込み下さい。http://www.florence.or.jp/
フローレンスのサービスエリアは東京23区の足立区/板橋区/江戸川区/江東区/品川区/渋谷区/新宿区/杉並区/墨田区/台東区/中央区/千代田区/豊島区/中野区/文京区/港区/目黒区/荒川区/大田区/世田谷区/葛飾区/北区/練馬区 です。
ひとり親への超安価な病児保育サービス「ひとり親パック」に共鳴し、寄付を
して下さる!という方は、下記のフォームでお申し込みください。
http://www.florence.or.jp/corp/fr/fundraiser/
株主総会に託児をつけたい、説明会に託児をつけたいという
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ワークライフバランスや男女共同参画、ソーシャルビジネスについての
講演を依頼されたい企業、自治体、メディアの方々は
↓からお申し込み下さい。
http://www.florence.or.jp/inquiry/form1/ask_kouen.htm
フローレンスへのインターンを希望される学生は、
NPO法人ETIC.の細田さん宛にご連絡頂ければと思います。
http://www.etic.or.jp/
いつもご支援頂き、誠にありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
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本読んだよ。
駒崎くんの文章力にさらに脱帽しました。
駒崎くんの言うとおりで、この社会には「やる人」が必要です。社会起業家を支援したり、評論する学生さんには、ぜひ現場での「もがき」を体験してほしいなぁと思ってます。
そのほうが、面白いと思うんだけどね。
「やれることをやります」というのも一つだけど、それは現状維持でイノベーションにはならないですもんね。本城さんの1×1は永遠に1だけど、1.1×1.1×1.1・・・は、やがて2を越え、無限大に近づいていくという話をよく思い出します。リスクを取ってチャレンジすることがネガティブな社会ではなく、賞賛される社会であって欲しいと私も心から思います。
経営にはバランスが必要だし、なんでも支援になるってわけじゃ全くないから。支援はその人や組織の自己成長の機会を奪うことにもなるし。
う〜ん、医者が患者を診るには専門性(トレーニング)が必要なように、支援者が支援団体を診るのにも専門性が必要だってことくらい、考えればすぐ分かると思うんだけどな……。
ソーシャルベンチャー支援のプロがこの国にはまだ少ないから、「支援は簡単」って思っちゃうのかな。(安易だ。。。)
学生には「挑戦者」か「共犯者」になってほしい。そうして続けていったら、今度は自然と「相談に乗って欲しいんですけど」っていう人が集まってくるはず。(実際、僕が相談する人って、駒ちゃん含めてみんなそういう人。)
どーも。ゆはっちこと湯原です。
就活をしながらも、駒さんがいつも言ってくれていた「現場で汗を流す」「現場を理解する」という言葉が頭からいつも離れません。
私自身も、社会起業家やベンチャー企業、中小企業の支援をしたいという想いが常々ある人間でしたが、
今になって思うのは、「現場を知っているからこそ、支援できる」なのかなと。
現場で働く→結果を残す→伝える・支援する
そんな形で、まずは現場でもがいてみたいと思います。
有難うございました。
駒崎さんのようなロールモデルが生まれてくるのは喜ばしいことですが、次は裾野が広がって、駒崎さんたちに追い着き、追い越す人たちがどんどん現れてくれないと、メディアにも一般の人にもすぐに飽きられて終わりになってしまいます。
ただ、それでは現実に、まだ傍観している大学生たちに飛び込ませるためには何が必要なのか。もちろん、駒崎さんのような人からの熱い呼びかけもある程度の効果はあるのでしょう。『シードマネー付きのビジネスプランコンペ』っていうのは、さらに効果があるかもしれませんけど、問題はどこからどうやって持続的にそのお金を持って来れるのかってこと。パブリシティ頼み、CSR頼みではすぐに限界が来るのは目に見えてますから。ここらへんの仕組みづくりはしっかりやっていかないと、と思います。
日本では、チャリティの域を出ていない事業をやってても「社会起業家」と呼ばれる例がありますが、これではすぐにブームも尻すぼみになるでしょう。
遠回りに見えても、焦らずに、一度しっかりビジネスを学ぶというのも、社会起業家への道としてありだとおもいます。
そのためには、「社会起業家が流行っている」とか、「社会起業家を知っている人が多数派になった」という認識(フェーズ1)では、何よりも社会起業家自身が困るはずです。
「ふつうの人」のほとんどは、社会起業家が何をしているか知らないです。
今日でも、中学生がモンハンをするように、主婦が井戸端会議でヨン様を語るように、フローレンスやマザーハウスを話題にしたりはしていません。
(ちなみにYMOが流行った際は中高生から40代まで、みんなテクノポップを聞いてましたよ)
社会起業を知らない人が、社会起業家と一緒に汗を流して協働できますか?
できませんよね。
そこまでの関心がまだ高まっていないことに、実は社会起業シーンにいる人は切実さを感じていないんですよ。
なぜなら、当たり前のように社会起業をしている人は、当然、自分と同じような人たちと親しく付き合うことになる。
そうすると、まわりがみんな社会起業を知っている人になってしまう。
だから、「こんなに知っている人が増えたのに」と勘違いしてしまうんです。
これは、ある意味で「東京病」です。
メディアに社会起業が載る機会が増えたから、社会起業家に関心を持つ人が増えたと錯覚してしまいがちですが、田舎をもっと見てほしいのです。
社会起業なんて、誰も知りません。
知らないからこそ、経産省も税金を使って認知拡大をしようってわけでしょう。
まずは、「知る」こと。
つまり、広報を支援すること。
そして、社会起業家の存在と社会的役割を知ったふつうの市民が、自分の出来ることで社会起業家との「協働」に参画すること。
フェーズ1に達していない人を置き去りにしては、フェーズ2へはなかなか進めないってことを、社会起業家自身が肝に銘じておかないと、せっかくの人材も調達できないと思います。
だから、社会起業支援サミット(リンク)が必要になるんですよ。
そこでサミットの全国各地の開催運営組織がまずやることは、「社会起業って何?」という議論です。
というか、そこからどうしても始まってしまうんです。
全国レベルでは、その程度の認知度しかないんですよ、実際。
つまり、「みんな知らない」という認識から始めないと、社会起業家はいつまで経っても同じイライラを抱えることになるんです。
支援から協働への流れは、障害者や高齢者の介護の活動シーンを見ると、よくわかります。
まずは、当事者の障害者を支援する。
その中で、支援者と被支援者がお互いを知って行き、やがて「支援者と被支援者が対等なパートナーとして協働する」という地平に落ち着いてくるんです。
フェーズ1が果たされなければ、協働もないわけですよ。
(だからといって、広報を社会起業家の本業にするわけにもいかないので、僕は市民からのボトムアップを仕掛けているのです)
なので、いみじくも経産省が昨年春に「84%の日本人は社会起業を知らない」というデータを発表したように、まずはフェーズ1こそが社会的課題なんだという認識を持たないと、協働のパートナーを集めることは難しいままでしょう。
企業を味方につければ、金は出るかもしれません。
しかし、必要なのは協働できる人材です。
だからこそ、「人」を見てほしい。
全国の市民が社会起業家を認知し、支援に動き出したことの重みを知ってほしい。
そう切実に思います。
大学生が休学してインターンやボランティアに精を出すこと、
これは確かに熱いものを感じます。
しかし、それ以外の人イコール熱くない
とはまったく別のものだと思います。
いろいろな観点から(ビジネスなど)から動こうとしている人、休学する費用などの面でどうしても休学は無理な人。
このような人たちを無視しているような気がしてなりません。
確かに理論だけでつかむ仕事ではないとは思いますが、少々強引な文章に感じました。
お久しぶりです!
グラミン銀行の新規IT事業に参画している
早稲田大学の三好大助です!
ブログに少しでも紹介していただいて
本当に光栄に思います。
今後とも
とことん「手を汚し」続けようと
僕は思います!
駒崎さんのとってもとっても熱い想い響きました!
ぜひともに日本の若い世代を盛り上げていきましょう!!!
三好大助
頑張って下さいねー。バングラデシュで、日本で、奮闘してみて下さい。学生のうちにそうやって全速力でぶつかる経験は、何物にも代えがたい成長をもたらしてくれます。
三好さんのような実際に現場を駆け回るプレイヤーが増えていってくれると良いと思います。がんばりましょう!
ご無沙汰しております。小室ファミリーでお世話になりました、堀越直人です。
やる人が足りない、という言葉は社会起業家に興味を持ちながら具体的なことを為さなかった自分にとっては、極めて耳が痛い指摘でした。
僕自身は学生時代に(営利目的の)ベンチャー企業であれこれと手を動かしていましたが、そもそも学生にとって、アルバイト以外で現場で手を動かすということ自体が、まだまだ自分事として定着していないのだと思います。ですから現場に行くということ自体が自分よりずっとすごい学生がやるものである、まして駒崎さんのように学生で起業をするような極めて稀な人こそが、ソーシャルビジネスという珍しい分野で成功を収めることが出来るのだと感じてしまう…というケースが多数派なのではないでしょうか。
そして駒崎さんや他の起業家の方からも、少なからず「はじめから根性あるやつしか要らん」という空気を感じてしまいます。(仕方が無いかもしれませんが。)
制度ももちろんそうですが、もっとソフトな部分で学生を自然に現場へと促せるような仕掛けがあればいいのにとも思います。
ところで、僕のブログで駒崎さんのこの記事・問題意識を引用させていただきました。もし不都合な点などございましたら、お申し付けください。