友人の山本繁くんがこの度新著を出版。
まずこの一見後ろ向きなタイトルだが、典型的な釣りである。
中身を読んで頂ければ分かるが、「自らに確固とした夢なんてなくとも、困っている他者のニーズをくみ取っていけば楽しく有意義に生きられるんだ。」といういたって真っ当な主張を述べている。
そう、こうした真っ当さ、が僕が彼に好意を感じる理由なのだろう。読者であるあなたもそうに違いない。ニートやフリーターの自立支援という若者文化のただ中に活動しようとも、彼は真っ当なのだ。しかしそうした真っ当さがありながらも、各メディアが何十社も食いつくような影響力のある事業を仕掛け続けているギャップは、彼独特の魅力であろう。
この本はソーシャルビジネスや社会起業家に興味があり、なおかつ「何かやりたい」人に読んでもらいたい。それは、この本が失敗を描いているからだ。詳細は本書に譲るが、彼は最初に仕掛けた社会事業、次に仕掛けた社会事業、共に損益分岐を迎えられずに挫折する。そしてようやく3つ目の事業において社会性と収益性を両立できる。
ここは非常に重要なポイントだ。僕を含めて、僕の愛すべき社会起業家の友人たちも、みな、事業の再構築や、ことによっては廃棄を行っている。それらは大々的にメディアにはでないし、本人の口から語られることは少ないが、しかし現実である。
僕も今のような「非施設型」「共済型」病児保育に辿り着く前には、商店街の空き店舗を活用した「施設型」病児保育を立ち上げようと格闘し、結果として準備に1年かけたそのモデルを廃棄した。廃棄というと簡単なようだが、非常に大きな痛みを伴った。今まで関わってくれた人達に全く違うことを言わなくてはいけなくなる苦痛。膨大な労力が沈んでしまったような無力感。今思い出してもあの頃には戻りたくない。
しかしこうした労苦は不可避である。我々は批評家ではない。批評家は自分の仮説に責任を持つ必要はないが、われわれ実務家はそれを現実で検証しなくてはいけない。ビジネスの領域では起こり得ないことが、地域や政治、行政、福祉をまたぐ我々の領域では起き、ただでさえ難しい方程式を多元化させる。
ゆえにこれから社会事業を始めようとしている若者にはぜひ言っておきたい。転んだって、良いんだ、と。受け身を取って違う技をかけていけばいいんだ。
この本は失敗も成功も、そうした「やってるヤツじゃないと分からない」ことをたくさん書いてくれている本だ。決して上から目線で「社会起業家になるためにはさぁ」と語る本ではない。カウンターで一緒に飲みながら、「そういえばこんなこともあったんだよね、あはは」と語りかけるような本だ。
こんな本がたくさん出てくれると良い。
そして単なるブームを越えて、「やってるヤツ」が増えますように。
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ユニクロの柳井さんが「一勝九敗」という本を出しているけれど、いかに致命傷を負わずに早く9敗して、大きな1勝をもぎ取るかが大事だよね。そのプロセスやそこから学んだことを次の挑戦者に伝えられればと思って書いた部分も多いので、そこを言い当ててもらえたのはとても嬉しいです。
「やってるヤツ」が増えるといいよね。本当に。