新宿で社会事業に携わる人たちが集まって忘年会をした。
・かものはしプロジェクト 共同代表村田さん・青木さん
・Komposition 代表 寺井さん
・(株)ヨセミテ 副社長 塚田さん
・コトバノアトリエ 代表理事 山本さん
・NPOカタリバ 代表理事 今村さん
・CANVAS 代表理事 石戸さん
・ACTION 代表理事 横田さん
・Y-MAC 事業統括 岩本さん
・夢職人 代表理事 岩切さん
・FACE 代表理事 池本さん
・みやじ豚 代表取締役 宮治さん
等など
で、30人くらいのメンバー。
普段は忙しくてなかなか会えないけれど、こうして会えると志を温め合えて、本当に嬉しい。皆社会を良くしようという熱い思いを持った良いやつらだ。
思えば彼らと会えたのも、ETIC.のプログラムだったりがきっかけで、そう考えるとETIC.のような支援団体の皆さんには心から感謝しなくてはいけないと思う。
ETIC.に限らず、中間支援団体のプログラムには、互いに切磋琢磨できる仲間と出会えるという副次的な効果があって、むしろそっちの方が影響が大きいように思えてならない。
多くの仲間が言うように、社会事業を営むものの悩みを一番理解するのは、同じ立場にある社会起業家だからだ。
とはいえ同友会的な業界団体を作ろう、みたいな話はまだ時期尚早だと思う。
僕たちは今は大汗かいて自分たちの事業基盤を強固にし、地に足着いた事業をしっかりとこなし、社会的信頼を得る方を優先させた方が良いと思うからだ。
08年のこのソーシャルビジネス業界(というワーディングが正しいかどうか知らないが)がどうなったかを振り返る。
まずは拙著「『社会を変える』を仕事にする 〜社会起業家という生き方〜」が前半で売り出され、ある程度狙い通り大学生を含めて若い層に読んでもらえた。これによって社会起業家とかNPO経営者というのが、遠い存在ではなく、そこらへんにいるあんちゃんで、そういう選択肢もなくはないよな、という認識を一部の学生コミュニティには持ってもらえたのではないかと思う。
本の結果では全くないと思うが、学生の中から社会起業家サークルやシンポジウムを行う動きが散見された。業界が学生たちにとって身近になってきつつあるシグナルだ。
またチャリティプラットフォームなどビジネスセクターから参入された方々が、これまでにない規模のインキュベートプログラムを実施され、業界に一石を投じた。またISLなどビジネスセクターのリーダーシップ研修機関が、ソーシャルイノベーションセンターを設立する等、ビジネスエリート層がソーシャルビジネスに接近し、むしろどの中間支援組織よりも積極的に海外のベストプラクティス達を招聘し、ムーブメントを加速させていった。
更にようやく、国がソーシャルビジネスに予算をつけ始めた。経済産業省がソーシャルビジネスの水平展開予算を設定。同時に融資の仕組みも調査段階に入っている。
徐々にだが、業界の発展が伺えよう。
一方海外に目を移すと、もっとドラスティックだ。
韓国では李明博政権に対し希望製作所を中心としたNPO達が攻勢を仕掛け、国民的なキャンドルデモが勃発。支持率がガタ落ちしている。
また史上初の黒人アメリカ大統領になったバラク・オバマは、シカゴのコミュニティ開発NPOの出身であった。
グーグルオルグ(財団)はすごい額をグリーンエネルギーに投資して話題になった。
その他国内でも貧困問題に関しては若者を中心にNPO・勝手連的な動きが爆発し、政策立案に影響を及ぼしたり、あげたらきりがないけれど、色んな動きがあった。
で、09年は業界はどう動いていくべきなのか、というようなことをつらつらっと考えてみる。
【制度や環境】
1.ブームではなく、ムーブメント
ITベンチャーのように、ブームにしちゃいけない。ブームにすると変な勢力が寄ってたかってきて、始めにあった志が歪められちゃう。ITベンチャー時代、多くのスポイルされた事例を見てきた。
華々しくなくて良い。格好良くなくて良い。じっくり、徐々に人々に認知され、共感され、いつの間にか大きなうねりとなっている。そういうのが望ましい。
2.助成金だけではなく、融資の仕組み
スタートアップは大量の助成金があり、展開フェーズは融資の機会がごろごろある、というのが理想的な状態。今は助成金はぼちぼち出てきたけれど、融資、つまりお金がNPOだと借りづらい。僕たちもいつも借りるのに苦労する。融資の仕組みがあっても、借りるような実力があったり、借りる文化のあるNPOは非常に少ないのでは?とよくお役人さんに言われるけれど、それは卵と鶏の議論。借りられる機会があって、借りれて事業を大きくできた仲間が出てくれば、俺もちょっと考えてみよう、となって借りてみて、ああやっぱり助かった、っていって融資を使う文化ができる、っていう流れも十分ありうると思う。事業型NPO(≒ソーシャルビジネス)発展のために、融資のプラットフォームは欠かせない。
3.公益法人とかは置いておいて、寄付税制の前進
新公益法人制度ができたけれど、使えるのかどうか、は微妙な状況。とりあえず2,3年は様子見で良いかな、と。今年は麻生内閣の1万2000円配っちゃうよというギャグみたいな政策によって、国家に任せておくとこのように自分たちの税金がどぶに捨てられる、ということが痛いほど理解できた年だった。これが、自分たちの税金なんだから、少なくとも少しは自分たちの問題意識のあるところに投資したい、と思う動きのきっかけになってくれれば良いと思う。
【自分たちがすべきこと】
どっちかというと、環境とか制度うんぬんより、こっちの方が10倍大事かな、と思う。
1.話題だけでなく、成果をきちんと出す
色んなメディアに取り上げてもらえるようになっているけども、僕らの本文は人を助け社会を変えること。きっちりと成果を出していかねばならない。残念ながらソーシャルビジネス仲間たちの事業規模は年商3000万〜1億程度。企業で言ったら零細規模だ。
もちろん通常のビジネスよりも稼ぐのは非常に難しい領域だし、単純に年商では社会的影響は全く比較できないのだけれども、それでも規模はもう少し大きくならなくてはと思う。
アメリカでは10億〜100億円規模のソーシャルビジネスがごろごろいる。全米就職希望企業ランキング10位のティーチ・フォー・アメリカは70億円だ。それでもランキングに入っているその他の企業たち、多くはフォーチュン50の企業達だが、彼らの100分の1くらい。だが全米の若者の多くが入社を希望し、教育業界に与える影響も非常に大きい。小さな予算で「てこ」のように大きな社会的変革を行う。
僕たちが1000億とか1兆とかの予算規模にいく必要は全然ないし、行かなくて良いと思うのだけれど、10億〜100億円規模にはなって、機動力を持ちながらてこを利かせて世の中を変えていっている、というようにはなりたい。
おそらく僕たちがそのくらいになると「NPOってボランティアじゃないの?」的な寝言はもう聞かれなくなるはずだ。
2.認知されることから、具体的なケースの発信へ
多くのメディアで取り上げてもらえるようになったので、誤解はまだあるにせよ、社会起業家という言説を流布させるフェーズは過ぎたのかな、と。むしろここからは具体的な起業ノウハウや、経営ノウハウ、国民のかかわり方など、具体的なトピックスが重要になってこようかと思う。
今度かものはしが本を出すらしいけれど、そういった経営者が自分たちの経験の血肉をシェアしていく、ということが望まれていくと思う。
研究者やジャーナリストの方々の社会起業家紹介本がこれまで認知拡大に必要なツールだったが、これからは当事者達がリアルなケースを発信していき、後進達の参入障壁を下げたり、ビジネスマンや一般の人たちたちが関われる経路を提示していくことに意味が出てこよう。
昨年末から今年の初めに本を出したが、その際は「調子乗ってんな」的なありがたいアドバイスを先達の皆様から頂いたが、あえて言わせてもらうと、そういった具体的なケースを発信しないと業界全体でノウハウが共有できないし、発展もないですよ、ということなのだ。
ビジネス業界ではたくさんのケースが発信され、そこからメソッドが抽出され、共有され、検証されていく。その繰り返しが新しい方法論を生成させていき、生産性が向上していくのだ。ソーシャルビジネス業界も同様だろう。
3.委託されるだけじゃなく、ロビイングの成功事例の創出
ある程度の実績ができて、行政からの委託事業を任される。そうすると
1.委託事業で稼ぐという発想しかできなくなる
2.行政にべったりで、反対意見が言えなくなる
という「委託のジレンマ」を抱えることになる。
けれど、委託を全く受けないのが正しいかと言うと、組織の発展と成長のためには必要なことだったりする。つまり「体には悪いと思いながら、適正量を決めて飲むビール」程度に扱う必要があるのだ。
委託事業を受けている事例は枚挙にいとまがないが、一方でロビイングに成功した事例は少ない。行政や政治家に働きかけ、馬鹿げた法律や条例の制定を防ぎ、あるべき法律や政策の制定に力を貸す、このロビイング。NPOだからこそできる技の一つである。
しかしこのロビイング。やっても全く儲からない。(それで不当に儲けたら、それこそアメリカの腐敗ロビイング天国と同じになってしまう。)
すると事業型NPOとしては、やってもやっても金銭的リターンがなく、やり続けるのに無理が生じてきてしまう。いきおい、ソーシャルビジネス、特にソーシャルベンチャーにとってはロビイングは縁遠いものになってしまう。
けれどロビイングなく事業だけやっているNPOは「社会問題を飯の種にしちゃう人たち」になってしまう。自分たちの食いぶち保護のため、問題を創りだし、維持し続けるような慣性の法則も、残念ながら働いてしまう。
そんなわけで、まだまだ体系化されていない「倫理を伴ったロビイング」のノウハウを業界全体で共有していくことが、今後は必要であろうと思う。
自戒を込めて考えると、僕はこれまで政治や行政と相当距離を取っていたのだけれど、もうちょっと良い距離の取り方もあっただろうな、と思っている。距離はゼロか1かではなく、0.6とか0.7という選択もあるわけだから。
忘年会の話を書こうと思ったら、妙に長くなってしまった。
来年こそ、短く分かりやすく毎日継続できるブログライフを送ろう。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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