2008年09月05日

【読書感想文】「世界を変えるビジネス〜戦略的な社会貢献活動を実践する20人の偉大な経営者たち〜


(株)セールスフォース様から御献本頂きました。

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世界を変えるビジネス―戦略的な社会貢献活動を実践する20人の経営者たち (単行本)






マーク・ベニオフ (著), カーリー・アドラー (著), 齊藤 英孝 (翻訳)






















失礼な言い方だが企業の宣伝本だと思って余り期待しないで読んだら、
非常に面白かった。

特にティンバーランド社長のジェフリーシュワルツ氏の項がウィットに
溢れなおかつ社会貢献と事業の融合に関する示唆が秀逸で、
この項だけ読むだけでも買う価値がある。

実は文中に出てくる「シティ・イヤー」というのは、僕が尊敬する
ソーシャルベンチャーのひとつで、教育NPOだ。
ハーバード大生が貧困地域の授業などを担当したりする団体で、
全米に17、南アフリカにも進出し、40億円くらいの予算があるような
すごい団体である。ハーバード大学の学生が2人で立ち上げた、
ソーシャルベンチャーである。

以下、引用。
-------------------------

シティー・イヤーの共同創設者、アラン・カーゼイが会社に
やって来た。私はアランを会議室に通した(社会正義の人間を
自分の部屋に入れたくなかった。なにせ私は起業家であり、勇ましい
資本主義者だったからだ)。

アランは机の向こう側に座った。礼はなかった。代わりに彼は
こう言った。

「あなたは、自分の仕事はブーツと靴を作ることで、私の仕事は
世界を救うことだと思っているでしょう。もし半日、つまり四時間
投資する気があるなら、この二つの仕事を一つにする方法をお教え
しますよ」

それは一般的なセールストークとは趣が異なった。無視するにはあまりにも
知的に大胆なアイデアだと思い、少なくとも確かめてみなければ
ならない気がした。

(中略)

そこで、ティンバーランドの社員を10人連れて、ニューハンプシャー州
ハンプトンにあるオデッセイハウスに出かけた。麻薬中毒を断ち切ろう
とする若者たちが集まる施設である。

(中略)

オデッセイハウスに住むひとりの若者が私に近づいてきて、ティンバー
ランドで何をしているのかと尋ねてきた。私は少し得意げに、
「国際事業担当のシニアバイスプレジデントだよ」と答えた。

「でも、何をやっているのですか?」

「何をやっているって・・・。だからティンバーランド社の国際事業の
責任者だよ」

私は相手が感心してくれることを期待したが、一向にそういう様子は
なかった。どうしたらいいかわからず、逆に「じゃあ君は何をして
いるんだい」と聞いてみた。すると彼はこう答えた。

「僕はよくなっていますよ。」

こういった話は誰もが本で読んだり、テレビで観たりしていることだろう。
しかし、実際に経験することとは全く違う。(中略)
私の人生にとって重要なことは、すべて個人的である。
この若者のおかげで、その日は私にとって非常に個人的な日となった。
この瞬間に、これまで知らなかった現実と関係を持つようになったのだ。

(中略)
その日、私はそれまでの自分に別れを告げ、新しい自分にであった。
肩書きよりも強く、実際に世の中をよくすることができる自分である。

(中略)

その日、会社にもどった私は二つのことを決心した。

1.シティーイヤーと提携すること―アランはどうすればブーツを
作ることと世界を救うことが同じになるのかを、四時間の間に
示してくれた。
2.周りにも広げること―それが非常に強力だということが、私には
手に取るように分かった。

(中略)

当社はシティーイヤーのユニフォームに年間100万ドルは投資している。
また、これまで、当社はシティーイヤーに2000万ドルの株主資金を
投資している。私が「投資」というのは、収入、すなわちリターンが
あるからである。それも継続的なリターンだ。

(中略)

ティンバーランドの強みは、「自明の理」を社員がしっかりと
理解していることである。つまり奉仕の精神がそもそも人間の
本質として備わっていることを、彼らは理解しているのだ。

人間は日常のありきたりな出来事よりも力強く、崇高な何かと
かかわりたいと思っている。これはティンバーランドで発明
したことではない。当社は単に奉仕は事業の一部だという
言葉を考えただけだ。そして、この言葉を毎日の仕事の中で
推し進めることで、ティンバーランドという会社を内部から大きく
変えたのだ。

当社の社員は仕事を大切にしている。それはもはや単なる仕事
ではなく、彼らの心のうちにある。(中略)
そして、より競争力のある、強い会社になった。
事業として当社が成功しているのは、価値観と努力が調和した結果
である。

(中略)

この提携関係は、営利企業のCEOである私に、偉大さへの最も
直接的な経路を、与えてくれたのである。

------------------

長い引用を書ききってしまうほど、示唆に満ちている。

僕はソーシャルベンチャーの側の人間なので、この話から、
SVが企業に提供できるもの、を学べる。

営利企業は営利のために存在しているが、従業員は
「営利のためにがんばろう!」とか「株主利益を最大化させる
ために死力を尽くそう」とか「一人当たり利益を20%増やそうぜ、
みんな」と言っても、継続的に頑張り続けるのは実際は難しい。

人は、意味を必要とする。この作業が何の意味があり、意義があるのか、
と。それがセットじゃないと真に従業員の創造性とやりがいを引き出す
ことはできない。あるいはそれを引き出すために、たくさんの給料、
インセンティブを払い、鼻の前にニンジンをぶら下げなくてはならなく
なる。

一部の企業はたくさんのニンジンを用意できるだろう。しかし
多くの会社でそれができるわけではないだろう。

ソーシャルベンチャーは、NPOは企業に対してそれを提供することが
できる。企業も彼らとのかかわりによって、本来は社会的な自らの
事業を「発見」することができる。

そして互いの強みを生かして、非常に大きな社会的インパクトを
生み出せるのだ。

主にアメリカの事例によって占められていて、日本企業は一社しか
入っていないが、本来日本企業の多くはミッションに基づいて
生み出された。ソニーしかり、松下しかり。
こうした本が、日本企業の事例によって占められる時代を、強く
望まずにはいられない。

今は小さなソーシャルビジネスの潮流が、既存の企業も巻き込んで、
既存の企業たちが次々にそのミッションとソーシャリティを再獲得
していき、国の衰退によって劣化する社会の問題に対し、切り込んで
いけたら。

本書の刊行がそうした潮流の誕生に貢献することを、心から願う。
良書を御献本頂き、ありがとうございました。

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当記事は代表理事駒崎弘樹の個人的な著述です。
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いつもご支援頂き、誠にありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
_______________________
posted by 駒崎弘樹 at 17:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 業務日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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